「歌手はタバコを吸っちゃダメ?」
よく聞かれる質問です。実際、メジャーで活躍している歌手でもタバコを吸っている人はいます。
僕自身、以前は1日1箱吸うヘビースモーカーでした。今回は、禁煙して10年経った今の実感をお話しします。
禁煙を決意した日
ある日、バイト先の休憩所で友人に宣言しました。
「これが人生最後のタバコだから!」
歌手として本気でやっていく決意を込めた禁煙でした。あれから10年以上、一度も吸っていません。
タバコが声に与える影響(研究データより)
「タバコは声に悪い」とよく言われますが、具体的にどう悪いのか。研究データを見てみましょう。
2020年のメタ分析(複数の研究を統合分析したもの)によると、喫煙者と非喫煙者の間で声の基本周波数(ピッチ)と最大発声時間に統計的に有意な差が確認されています。
また、声帯の微細構造を調べた研究では、喫煙者の声帯はコラーゲン繊維の配列が乱れていることがわかっています。これが声帯の柔軟性低下につながります。
参考: Scientific Reports (2020) "Evaluating the effects of smoking on the voice"
1. 声帯が厚くなり、高音域が失われる
タバコの煙は声帯を慢性的に刺激し、腫れや肥厚を引き起こします。
声帯が厚くなると声は低くなり、歌手にとっての高音域が削られていくことになります。クリーブランドクリニックの医師によれば、この変化は歌声で最初に気づくことが多いそうです。高音を出すとき、声帯を伸ばすので腫れが目立ちやすいためです。
2. 肺機能の低下
タバコは肺胞にダメージを与え、呼吸機能を低下させます。
歌において呼吸は超重要。ブレスコントロールができなくなれば、ロングトーンもフレージングも難しくなります。
3. 進行性・不可逆的なダメージ
これが一番怖い話です。
声帯にできた傷跡(瘢痕)は不可逆的で、しかも進行性です。20代の軽いかすれ声は、30代、40代と年を重ねるごとに悪化していく可能性があります。
長年の喫煙で蓄積されたダメージは、最終的に歌手としての音域を失うことにつながりかねません。
タバコによる声帯の病気
喫煙を続けると、喉頭炎、ラインケ浮腫、白板症などの声帯疾患のリスクが高まります。ポリープができれば手術が必要になることも。
禁煙して10年、声はどう変わった?
正直に言うと、禁煙直後に劇的な変化は感じませんでした。
でも、10年経った今振り返ると:
- 朝起きた時の声のかすれがなくなった
- 長時間歌っても声が持つようになった
- 風邪をひいても回復が早くなった
- 息が続くようになった
これらが「禁煙のおかげ」と断言はできませんが、少なくともマイナス要因を一つ減らせたのは確かです。
朗報:声のピッチは回復する可能性がある
研究によると、禁煙後、声の基本周波数(ピッチ)は回復する可能性があります。声帯や喉の刺激が治まるまでには数週間から数ヶ月かかりますが、変化は期待できます。
「ハスキーボイスになるから吸う」は本当?
「タバコでハスキーな声になる」という話を聞いたことがあるかもしれません。
確かに、タバコで声帯が荒れれば声質は変わります。でもそれは「いい声」ではなく「傷んだ声」です。
ハスキーボイスは、健康な声帯の使い方で作れます。わざわざ声帯を傷める必要はありません。
禁煙のコツ(僕の場合)
- 人に宣言する - 逃げ道をなくす
- 代わりの習慣を作る - 僕はガムを噛んでいました
- 「1本だけ」を許さない - 1本吸ったら戻ります
- 目的を明確にする - 「歌手になる」という目標があった
まとめ
タバコを吸いながら活躍している歌手もいます。でも、長期的に見れば声にとってプラスになることは一つもないのが事実です。
研究データが示すように、声帯へのダメージは進行性で、蓄積していきます。若いうちは平気でも、年を重ねるごとに影響が出てくる可能性がある。
歌を本気で続けたいなら、禁煙をおすすめします。