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歌唱時機能性発声障害はイヤモニの使い方が原因?

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Hiroshi Yoshida

2017-12-09

ボイストレーナーとして業界では非常に有名なりょんりょん先生が、先日flumpoolのボーカル山村隆太さんも活動休止の原因となった歌唱時機能性発声障害はイヤモニの使い方が原因ではないかという問題提起をされていて、かなり業界に影響を与える提言のような気がしています。

イヤモニは”空間感覚”をおかしくするのでは?

佐藤凉子『〜現代病とも言える「歌唱時機能性発声障害」の多発について〜』

現代の大きな会場でのライブにイヤモニは欠かせないものになっていますので、こちらの提言はとても勇気のいるものだったと思います。はっきりとイヤモニが原因だ、ということを言い切れるようなエビデンスはないけど、現場の経験からこの意見を業界に投げかけたりょんりょん先生は本当に素晴らしいと思います。

僕は正直、初めて大きな会場でイヤモニを使った時は感覚的に変な感じでした。大きな会場で人がわーーって言っているのにそれが聞こえない、自分の声が空間でどういう風に響いているのかわからない。

なんだか大勢いるのに家で一人で歌っているような感覚になってしまったりします。それがどうも、アンサンブルやその空間全体の鳴り方の意識じゃなく自分の演奏のディテールにばかり気持ちがいってしまう原因になるような気も。

あとは、今回の発声障害にも関わることかもしれませんが、僕はイヤモニをつかうと声量の感覚が非常に難しいなと思っていて。自分の声が聞こえすぎると声が無意識に小さくなってしまって、それこそ家で一人で歌っているようなテンションになってしまう。

だから自然に、この記事にあるようになるべく自分の声を小さめに設定して聞くようになった。あとは片耳だけきいてみたり、ちょっと空間を開けてみたりいろいろ試してる。

発声って、遠くに呼びかけるような時と、その辺にいる人に話しかけるので変わってしまって当然ですが、その空間感覚みたいなのがイヤモニだと特になくなっちゃうんですかね。よほど意識し続けてないと。

ここまで書いてきたことはころがし(足元にある本人が自分やバンドの音を聞くためのスピーカー)でも結局同じなんですが、ころがしだと周りの音量の影響をうけやすい。でもそれが自然にアンサンブルの意識につながってるのかもとか。

最近は周りの音も一緒に聞けるようなイヤモニも出ているらしいので、そういうのがいっぺんに解決してくれる可能性もあるかもしれませんが、その環境をたくさん経験できる機会がないのでよけいにその場で無理してしまいがちなのかもしれません。

イヤモニって孤独な感覚になりがち?メンタル面での影響。

大きな会場で、何曲も自分がリードを歌うというプレッシャーも想像に難くありません。ちょっと調子がわるくてもなんとかやりきらなければいけない、そして無理をしてしまう、それがミスを誘発して余計悪循環に。

その恐ろしさはボーカルとしてはとても共感できるところがあります。

僕はサポートの仕事でしか使ったことがないので、確実に”仕事”をする、という意味ではイヤモニはいい気がするけど、ライブ感、テンションが上がる感じは圧倒的にころがし。そしてころがしの方が細かいことが気にならない(俺だけ?w)そういう意味でも、リードのシンガーはわーっとエネルギーを発散するように歌える方がストレスも少ない気はしますね。

大きな会場のリハで声を出した時に自分の声が会場に響き渡ってる感覚はとても気持ちがいいし、それを感じながら歌うのとイヤモニの空間で歌うのでは少なくともメンタルは全然違うだろうなと思います。

結局、ツールも使い方次第。こういう問題提起から新しいテクノロジーが生まれたりして、みんながいい方向に向かえばいいですね。