Hiroshi Yoshida
2018-12-10
アーティストは自分がやりたいことをただやるべき。ビジネスのことを考えてる奴なんて・・という考え方もありだと思いますが、そういう人に限って周りの人がビジネスについて考えてくれるだけだったりして。
アーティストがビジネスについて考えるのは云々の前に、お金を稼ぐことはそもそも卑しいこと、みたいな思想というのは根強くあります。
しかしお金なくして生きていけないこの世の中で、誰かがお金について考え、行動しないと生きられない。
良い仕事の結果にお金は付いてくるとはいえ、じゃあ良い仕事って何??ということを辿れば、誰かが喜んでくれる仕事、ということになり
それはすなわち需要がある仕事、ということになる。そしたらまずその需要をどこかしらで知らなければいけないし、需要があるのかどうか世に問い続ける営業活動も必要になる。
それはすなわちマーケティング。先日もそのことに付いて書いてますね。
僕の感覚では、何かに値段をつけて売るという行為はすべてビジネスだと思っているのですが、どうもそういう感覚でないアーティストも多い気がしています。
制作するのにお金がかかったから、それを回収するために値段をつけて売る、というのもまさにビジネスの発想。ただやりたくてやってるなら製造原価を回収しなければいけない理由もないはず。例えばただ行きたくて行った旅行で何かお金を回収しなきゃいけないなんてことはないですよね。あー楽しかったで終わりでいいはず。
どうやら調べてみると、ビジネスという言葉には単に仕事という意味だけでなく、
個人的な感情を交えずに利益の追求のみを目的として進める仕事。「ビジネスに徹する」出典:デジタル大辞泉(小学館)
という意味があるようです。つまりアーティストがビジネスという言葉を嫌うのはこういう側面だったんですね。
音楽に限らず、世の中に存在するあらゆるビジネスで、利益の追求だけを目的に進める、ということはやっぱり尊敬されない。そこは僕も共感します。
たとえそれで大金持ちになったとしても、周りの人に嫌われるような仕事をしていたら幸せとは思えない。アーティストなんてなおさらそうだと思います。
売れようとしてあまりに世間に寄りすぎても中身が空っぽになってしまうし、あまりにパーソナルで独善的な内容になっても本人しか幸せにならない。(いやこの場合は結果として本人も幸せにならない気がするんだけど。)
”売れない物をつくるのは、だれも幸せにならない”というのも真実。物を作るというのはエネルギーを使うし、良さを広めるために努力もしなければいけない。その労力を誰かがやってくれるとしたらなおさら、せめて 協力してくれるその人たちが本当に良いと思ってくれるものじゃないといけませんよね。
だからこそ、全身全霊で考えられる限り、良いものになるように手を尽くさないといけない。その良いもの、の基準は、自分の中にある美意識や思いの強さでもいいし、聞いてくれる誰かを想定した”あの人だったらこれをどう思うかな?”という発想でもいいと思う。
でも、最後の砦は、心の底から自分が納得できるかどうか。その軸はあらゆる物事の評価に繋がっていくと思うし、不思議と心の底から納得できたものには共感も集まるもの。
何かを作って世に放つ時には、自分の感覚やマーケティング感覚、あらゆる側面からぐるぐるとどれだけのことを考えて、エネルギーを注げたか?ということが結局大事なんじゃないかと思いますよ。