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歌詞のアイデア作りで大切な、「ギャップ」について

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Hiroshi Yoshida

2019-01-10

作詞で言いたいことのテーマを設定したら、あとはどううまくそれを伝えられるような表現を探すか。人間が歌の中で言いたいことは普遍的で、結局本質は何万年も前から同じだったりする中で、いかに今の人に伝わる表現を探すか?

まずギャップを探してみる。

ギャップ法、という文章の作り方もあるくらいですが、ある物事を伝えるために、あえてその反対の表現をつかって強調する、という方法がありますね。有名なところだとオバマ大統領の

これは私の勝利ではない。あなたの勝利だ。

とか。歌詞を考える時、何か正反対のもので表現できるような言い回しがないものか常に考えてみるのはアイデアを寝る上でおすすめ。 そのギャップになぜ感動があるのかは、また突き詰めて考えてみたいとこなんですが、先日も最近すごいと思う作詞家として野田洋次郎さんをあげたんですが、その中にもギャップ的表現がたくさんあったので、あげてみました。

スパークル

美しくもがくよ (もがく様は普通美しくない) 「さよなら」から一番遠い場所で待ち合わせよう (さよならつまり別れの反対は出会う) 生温いコーラにここではないどこかを夢見たよ (日常からの非日常への憧れ) 運命だとか未来とかって言葉がどれだけ手を伸ばそうと届かない場所 (逃れられるはずのないものからの自由?) 一生、いや、何章でも (同音で意味が違うが、短い命と、想像的な永遠?) 「はじめまして」なんてさ 遥か彼方へと追いやって 1000年周期を 1日で息しよう(瞬間ととても長い時間の対比)

とか、いろいろ考えて見たらもうギャップの連続。とくにこの曲は時間と空間のギャップ表現が多くて、これが"君の名は"の中の時間とか空間を超えて行くイメージとも繋がって、宇宙的な大きさを感じさせてくれますね。

表現のストックは日々考え続けるからこそ生まれる。

歌詞が浮かばない、という人は多いですが、自分の日記のように自分の感情だけを曲にしていたら枯渇するのは当たり前。もちろん、シンガーソングライターで、自分のことだけ歌い続けたいんです、という人はそれを貫いていたらいいと思いますが、作家を目指したりするならそれだけでは到底足りません。

言いたいことの本質をまず設定したら、あとはどううまく、ハッとさせるように伝えるか。それは日々の表現のストックからしか生まれません。だからこうして、気に入った歌詞を一つ一つ分析して見て、抽象化してみる。

そうするとなぜそれがハッとしたのか、構造的な面白さが見えてきたりします。ギャップだけでなく、擬人化、擬音の使い方、リズム、韻をふむ表現・・など、いろいろな言葉遣いの面白さが見えてくるとまるでパズルのように歌詞を考えることができて、楽しくなるはず。

いいたいことなんてないよー、最近心が動いたことなんてないよー、というような人は特に、まず他の人の歌詞や、本などからインスピレーションをえて、インプットを増やす。

そしてそのインスピレーションを分解してみて、他のことに応用できないか考えてみる。 たとえば、先の歌詞の中の"美しくもがくよ"というのに似たような表現ってなんだろう? "美しく転がる"とか、失敗し続けてるけどそれが美しいみたいな表現に使えないかな?? そんなこと考えてたら例えば体操選手って美しく転がるよな? 体操選手の技を入れて、転がることが次の大技への勢いになってるとか?そんな表現できないかな?

これが使えるかは別として、こんなことをぐるぐると考えてるうちに、これだ!という表現に辿り着いたりします。

そう考えると、一行考えるだけでも無限の可能性があるんですね。でもこんなことをずっと考え続けてようやく、この人の作詞は特別だ!という物になると思います。

シンプルに、日々の思いを日記のように綴ったものももちろんいいですが、日々言葉を選びつづけている人と、普通に生活しているだけの人では表現の幅が違って当然。

今回紹介したようなアイデアも、取り入れて見たらどうでしょうか??