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歌の表現力とは?魅力があって心に響く歌を歌うために必要なこと。

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Hiroshi Yoshida

2016-07-12

歌の表現力、魅力、人の心に響く歌を歌う力。これは歌う人みんなが知りたい究極の力ですよね。ボイストレーニングなどのノウハウは結局土台の土台でしかなく、目指すべきところはまさにすべてがそこにある、とも言えることですが、一番法則にしづらい、言葉にしづらい領域であります。

歌の魅力は、人間力x技術の掛け算。

音楽には、綺麗で心地よいハーモニー、思わず体が動くグルーヴ、体を震わすような音圧、悲しくなったり楽しくなったりするメロディ、共感できる歌詞、というふうに、いろいろと音楽ならではの良さがあります。

これらの音楽的な良さの部分は誰でも努力して良くしていくことができます。誰もがコード理論を勉強して、一般的によくつかわれているような和音をうまく組み合わせられるようになれば、普通の人が普通に心地よいと思うようなハーモニーを作ることができるし、リズムもきちんと基礎から練習していれば体に染みつくものだし、ボイトレで声量も上がるし、たくさん曲を作っていけばメロディづくりのカンも歌詞のセンスも鍛えられます。

もちろん、その習得の早さなどには個々人のセンスが出たりしますが、基本的には技術で解決できることなら、誰でも上達できると僕は思います。

しかし、心を揺さぶるような音楽、人が足を止めるような何か、となると、それだけでは足りないことも多いですよね。

なぜ、あの人の歌は第一声が出た瞬間から空気が変わるのか?

そういう得体のしれない魅力はいろんな意味での 人間力にあるのではないでしょうか。

人を惹きつけるための人間力って?

僕なりにまとめてみると、

①誰が批判しようとも自分はこれだ、というような強さ。自信。本気力。

逆にいうと、あれができない、これができないと不安だったり、自分以外の誰かの真似でしか表現できなかったり、自信がない人にというのは見ていて伝わってしまうものです。それはもう、歌う前にその人を見た時点で、オーラのように発しているものだと思います。

不思議なもので、技術があるから自信がある、というわけでもなく、技術がなくても他の分野で成功したりした経験のある人なら自信に満ちた、人を惹きつける歌を歌ったりするものです。

しかしこれ以上ないというほど努力を重ねてきたからこそにじみ出る、ふっきれた強さ、覚悟、そういうものもやっぱりかっこいいですよね。

②深い悲しみ、生きている喜び、いろいろな経験をしたからこそ、大きな感情の”揺れ”が歌に滲み出る。

これもいろいろなアーティストを見てきて感じること。小さい頃のトラウマを抱えていたり、特殊な人生を歩んできた人が偉大なアーティストになる例は多いですが、それは人生のどこかで、やり場のないような感情を抱えてきたからこそ、それが歌で表現されていく、というようなことがある気がします。

という記事を書いていますが、そういう意味でも、いろいろな人間としての経験値が人としての魅力を作るということはたくさんあります。人の痛みがわかるようになる、ということでもあるかもしれませんね。

③何についてもセンスが高いからこそ、世界の中にいる自分を客観的に見て表現していくことができる。

こういった事も以前記事にしましたが、普段からの世界に対しての情報のアンテナの張り方、面白いものを見極める感覚、そして物事のつきつめ方、集中力、そういった力は作品やパフォーマンスに如実に現れます。

やっぱりそういう力の強い人は、時代の中でハッとするようなものを送りこんでくるし、小さな枠の中で考えていないからこそ、既存のルールを飛び越えて新しい価値を作れたりします。

普通にできることを普通にうまくなりたい!と、まず考える人は多いですが、実はそこを飛び越えて、あなたの表現、理想をつかむ方法だってあるのだ、ということは常に頭のどこかに置いておいた方がいいと思います。

歌とは”ことば”。言葉の意味、説得力こそが伝える力。

そして最後に付け加えたいのが、歌における言葉の力。日本人は特に歌詞を大切に聴いているという意味で、海外の感覚とすこし違った特性があると思います。

この人が言うからこの言葉は説得力がある、ということを感じることは日常でもよくありますよね。辛いことをたくさん経験したからこそ希望の歌が響いてきたり、ただひたすら遊んできたから楽しい曲が作れたり。結局歌は人生そのものの表現だと思います。

歌のテクニック的な部分にも関わる問題ですが、歌を突き詰めて練習していくと、音程やリズムや発声ばかり気になるようになって、 肝心の言葉を伝えるということがおろそかになりがち。

だからこそ逆に、何も歌を勉強していない人でも、 言葉が響いてくると感動できたりするんだと思います。

歌の中にある世界を表現する力こそが歌手の真の力と言っても過言ではないでしょう。

以上いろいろ考えてきましたが、人間力さえあれば、歌に限らずどんな場面でもあなたの人生をよくしていけます。ついでに、僕はこういうメンタルな強さの根本に、体の強さというのも関係しているのではないか?と思っているので(体育会系じゃないんですがw)ぜひこちらも見直してみてください。

追記2018-11-27 すごく基礎的なことだけど、リズム意識できてますか?

こちらの記事でも書いてますが、日本人は踊る文化がないせいか、それなりに歌える人でもリズムの意識がひくかったりします。

音楽はグルーヴがすべて!!というのはいいすぎかもしれませんが、ある意味、音程もハーモニーもグルーヴだ、ともいえると僕は思っているし、グルーヴの意識で体の使い方が変わるので、上手い人は必ずリズムがいいとおもっています。

リズムはどんなジャンルの音楽を好んで聞いてきたか、体に染み付いているか、ということが大きい気がするので、実際にいろんな音楽イベントなどに遊びに行って文字通り体で習得してきたセンスといえるかもしれません。

歌とは行き場のない感情の拠り所。

こちらの記事でも取り上げた、夏目漱石の草枕の冒頭の一節にあるように、芸術とはなんらかの生きづらさのはけ口だったりします。

ただ自分が売れたい、というのはみんなそうかもしれませんが、そうでなくどうしてもこの感情をはきださずにはいられない、という気持ちで作られたものは、同じような感情を抱えた人に刺さる何かがあると思います。ポジティブな感情ばかりではない嘆きのようなブルースフィーリングがこれだけ世界的な音楽の根本に流れているということを考えても

泣きや嘆き、辛い現実を乗り切るためになんとか前をむくためのワークソングなどに勇気付けられるのは、そういう行き場のない負の感情に共感するからかもしれません。